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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

店の戸締まりをすると、ジーが車を停めているコインパーキングに向かった。

潤「キー、貸して。」

ジーはちょっと目を丸くしたが、黙ってキーを差し出した。

ジーの車はオンボロの軽の箱バンだった。

潤「どこ行く? せっかくだから夜景が見えるところに行こうよ。」

ジー「夜景?」

ジーはぷっと吹き出した。

潤「だって、デートだぜ? "THE"なことしようよ。六甲山は?」

ジー「"THE"過ぎるわよ。」

ジーは苦笑いして、六甲山までのルートをナビに入力してくれた。

俺はアクセルを踏み込み、六甲山に向かって発進した。

途中、渋滞もなくスムーズに目的地に到着した。

車を降りると、山の上は気温が低くて寒かった。

潤「お、すげー!」

ジー「宝石箱をひっくり返したみたい、ってこういうことを言うのね。」

眼下に広がるのは、ぎっしりと詰まった輝く宝石箱みたいだった。

潤「やっぱ、東京の夜景とは違うな。東京は夜景が延々と続くけど、神戸は凝縮されてんな。」

ジー「神戸は市街が山と海に挟まれてるからね。」

潤「俺、こっちのが好きだな。」

ジーが、途中のコンビニで買ったホットコーヒーを差し出してくれた。

肌寒い風に、ホットコーヒーはじんわりと体を温めてくれた。

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