
果てない空の向こう側【ARS】
第10章 ワンダフル・ワールド(潤)
女性「いい靴ね。あなたが自分で選んだの?」
潤「いや、20歳の誕生日に、兄貴が買ってくれたんだ。」
女性「いいお兄さんね。」
潤「そうなんだよ! 翔兄は本当にかっこいい、サイコーの兄貴なんだよ! 頭も良くて仕事もできて、完璧極まりないんだ!」
女性「お兄さんのこと、好き過ぎでしょ。」
女性は俺の話を聞きながら、ブーツのはがれた面の接着剤を取り去り、新しい接着剤を塗り込んだ。
女性「ちょっと時間かかるから。コーヒーでも飲む?」
潤「あ、うん…。」
女性は、壁際に置かれた年代物のレコードプレーヤーの電源をつけると、ターンテーブルにのせられたままのレコードに針を落とした。
ジリジリとした音のあとに流れ始めたのは、トランペットの音色。
そして、男性黒人歌手の歌声だった。
潤「ジャズ?」
女性はポットを火にかけ、コーヒードリッパーにフィルターと豆をセットした。
女性「サッチモよ。」
潤「サッチモ?」
女性「ルイ・アームストロングのニックネーム。」
俺は、しばらくそのサッチモの歌声に耳をかたむけた。
しわがれた、でも太い低音の暖かい声は、古い町工場にしんしんと響き渡った。
潤「いや、20歳の誕生日に、兄貴が買ってくれたんだ。」
女性「いいお兄さんね。」
潤「そうなんだよ! 翔兄は本当にかっこいい、サイコーの兄貴なんだよ! 頭も良くて仕事もできて、完璧極まりないんだ!」
女性「お兄さんのこと、好き過ぎでしょ。」
女性は俺の話を聞きながら、ブーツのはがれた面の接着剤を取り去り、新しい接着剤を塗り込んだ。
女性「ちょっと時間かかるから。コーヒーでも飲む?」
潤「あ、うん…。」
女性は、壁際に置かれた年代物のレコードプレーヤーの電源をつけると、ターンテーブルにのせられたままのレコードに針を落とした。
ジリジリとした音のあとに流れ始めたのは、トランペットの音色。
そして、男性黒人歌手の歌声だった。
潤「ジャズ?」
女性はポットを火にかけ、コーヒードリッパーにフィルターと豆をセットした。
女性「サッチモよ。」
潤「サッチモ?」
女性「ルイ・アームストロングのニックネーム。」
俺は、しばらくそのサッチモの歌声に耳をかたむけた。
しわがれた、でも太い低音の暖かい声は、古い町工場にしんしんと響き渡った。
