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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

潤「あれ…、くっそ!」

靴に違和感を感じて見てみると、ブーツの靴底がベロンとはがれていた。

神戸に来て珍しさも手伝って、店の帰りにぶらぶら夜の散歩をしていたら。

潤「マジかよ!」

あたりに靴屋どころか、コンビニすらない人通りのない山手の住宅街。

潤「参ったな…。」

道端に座り込んで頭をかかえていたら、ジョギング中の女性が、俺の前で足を止めた。

女性「青年、どうした? 具合でも悪い?」

30代半ばくらいのその女性は、しゃがみこんで俺の顔をのぞきこんだ。

潤「いや、靴が…。」

俺は、足を突き出してはがれたブーツの底を見せた。

女性「これは気の毒に。ついておいで。」

女性は立ち上がるとスタスタと歩き出した。

潤「ついて来いって、ちょっと!」

俺は、はがれた靴底をペタペタ言わせながら女性のあとを追いかけた。

5分ほど歩いて着いたのは、小さくて古い町工場。

女性はポケットから鍵を出してきしむ扉を開け、中に入った。

女性「そこに座って。靴脱いで。」

俺は言われるままに、木のスツールに腰掛けて靴を脱いだ。

昭和の香りがしそうな町工場の中には、工業用ミシンと思われるものや、なにやら工具のようなものが並んでいた。

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