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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

智兄のカットが終わって、母さんの番だ。

母さんの髪をとかしてブロッキングしてから、ハサミを入れた。

母「週に何度もカットされたら、お母さん丸坊主になっちゃうわよ。」

潤「大丈夫だよ。ベリーショートのおしゃれなスタイル知ってるから。」

母「本当にやりそうで怖いわ。」

母さんは、はは…、と笑った。

夜更けの静かな室内に、ハサミの音だけが響く。

はらはらと、母さんの髪がクロスをすべり落ちる。

母「潤…。」

潤「なに?」

母「来週、行くんだよね…。」

俺は、手を止めた。

母「あんた、まっすぐ過ぎて、思ったことそのまま言っちゃうだろ? 言葉にはくれぐれも気をつけて…。」

潤「何だよ、大丈夫だよ。」

母「お客様に、失礼のないようにね。」

潤「だから、大丈夫だって。」

母「お殿様みたいな態度とるんじゃないよ。」

潤「大丈夫だよ。 それ以上言ったら怒るよ。」

母「母さん、心配しすぎだね…。」

母さんは、それっきり黙ってしまった。

俺も、ただ黙って母さんの髪にハサミを入れ続けた。

部屋の中には、ハサミと時計の音だけが響いていた。

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