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神様の願い事

第3章 変化

《sideA》



雅「ねえ神様」

「ん?」

雅「俺、勘違いしてたかもしれない」


あの歯ブラシの一件以来、ニノも俺の事を好きなんじゃないかと思ってた。

だってぶっきらぼうに話す言葉遣いも、照れ隠しなんだって分かってたし。

だけど。


「勘違い?」

雅「いい感じになったと思ってたのは、俺だけだったのかな…」


やっぱりニノはリーダーと仲が良くて。
いつもじゃれて、ニコニコと笑ってるんだ。


雅「凄く楽しそうなんだよね」


笑うその顔は、とても嬉しそうで。


雅「俺といる時、あんな顔してないかもしれない...」


はぁ、と溜息を吐くと神様は俺の膝に小さな手を置いて。
くるくると丸い目を光らせて覗いてくる。


「なんの話?」


わかってなかったのか。
慰めてくれるものだと思ってた。


雅「だから、アイツが好きなの、ひょっとして俺じゃないかもしんない」

「へ?」

雅「やっぱり昔から、ずっとあの人の事が...」

「自信無いの?」

雅「だって」

「僕には、いい感じに見えたけど」

雅「俺だってそう思ってたよ...」


好きともなんとも言ってない。
だってもうわかってると思ってたし。
ニノだってなんとも言わない。
それは恥ずかしいからだろうと勝手に思ってたけど。


「そうだな...」


何やら考え込む神様はニヤリとして。


「キスくらいしたの?」

雅「えっ」

「あ、まだなんだ」


ちょっと小馬鹿にされてる気がする。


「だから君に足りないのは雰囲気なんだよね。前にも言ったと思うけど」

雅「言われました」

「いつものキャッキャやってる感じじゃ確かに進展しなさそうだなぁ…」

雅「え、なんで分かるんですか」

「神様だから?」

雅「なるほど」


今度はゴロゴロと脇腹に擦り寄ってきて。


「んん~...」


気持ちよさそうに伸びをするとまたニヤリと笑って。


「キス、してみたら?」


俺の事が好きじゃないのかもしれないと悩んでいるのに神様はそんな事を言う。


「君は思い悩むところがあるから。悩み過ぎは禁物だよ?正しいものが見えなくなる」

雅「正しいもの...」

「例えば、きもち、とかね」


きもち、か。


俺の気持ちは決まってるけどニノの気持ちは?


それを確かめる為に、俺は進まなきゃ。





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