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神様の願い事

第2章 秘密

《sideO》



首の痕ねえ。

なんでそんなに気になるんだろ。

俺だってなんでこんな所に痕があるのか分からないってのに。


手の傷は、そうだな。
これはなんとか誤魔化さなきゃ。
まさか翔くんちでハサミを踏んづけたからだとか言おうものなら、目ん玉をひん剥いて説明しろと捲し立てるに決まってる。


それにしてもこの間は驚いたな。

猫の姿でうっかり寝てしまったモンだから、姿が元に戻ってるなんて気付かなかった。

ふと目を覚ましたら、俺は素っ裸で翔くんに抱き締められて眠っていて。

あ、やべえと思ったら光に包まれて自宅の姿見の前に引き戻されたんだった。


俺がいた事、バレてないよな。





翔「あのおっさん...」


ドアの隙間から見えるのは、眼鏡をギラつかせた編集長だ。


翔「ちょっと言ってくる」

智「え」


チラッとドアを見た翔くんも、あれが編集長だと気付いたらしい。
その瞬間、眉毛をピクッと引き攣らせてドアの方にくるっと向こうとした。


智「ちょ、ちょっと待って」


何を言う気だ。
アイドルってのはイメージが大事なんだ。
なんだかんだであの編集社には世話になってるし、出来れば丸く治めたい。


翔「だって覗き見とか...。せめてあのドア閉めておかないと」

智「や、駄目だよ。アッチが閉めるまで気付かない振りしとかないと」

翔「でも」


だからって見えない角度に引っ込んでいては、それも怪しまれる。
あのドアから見える角度に出て、自然に過ごさないと。


翔「あ~、やっぱ無理だ。我慢出来ねえっ」

智「しょ、翔くんてばっ」

翔「だって言わなきゃずっとこんなんだよ? 俺がちゃんと言っとくからっ」


ドアに向かおうとする翔くんの腕を掴んで引き止める。
だけど、翔くんは更にそれを振り払おうとする。


智「駄目なんだって」

翔「どうして?俺らの仕事の事気にしてるの?」


こうなったら難しいんだ。
熱くなってしまった翔くんを納得させる会話術なんて、俺には無いから。


智「波風立てたくないんだよ」

翔「だけど...」


口下手な俺が、どうやって翔くんの怒りを治めるのか。


言葉では適わないから、動くしかないか。







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