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神様の願い事

第2章 秘密



智くんは知ってる筈だ。

その痕が、いつどこで付いたのかを。


智「虫刺され...、かな?」

翔「へ」

智「よくわかんないんだよね。いつの間にか付いてた」


首筋に残る痕を、虫刺されだと言う。
あまり記憶が無いのだと、よくわからないと言うんだ。


翔「じ、じゃあ、コレは?」

智「へ」

翔「この手、何処で怪我したの?」


智くんの掌に肉球なんて無い。
なのに、俺はどうもその怪我が気になって仕方なかった。


智「...前も言ったじゃんか。覚えてないって」

翔「本当に?」

智「本当だよ。いつの間にか切れてたんだって」

翔「そう...」

智「...そんな気になる?」


不思議そうに俺の顔を覗くんだ。
その顔は、本当なのか嘘なのか。


智「全く、過保護だな(笑)」


俺は誤魔化されているのだろうか。


智「俺のが年上だよ? 甘やかし過ぎだよ(笑)」

翔「別に甘やかしてる訳じゃ無いけどさ」

智「甘いよ。そんなに甘いと、俺駄目人間になっちゃうよ(笑)」

翔「駄目人間って(笑)」


良く分からない。
俺の考え過ぎなだけの気もするけど、なんだか腑に落ちない気もして。

まあでも、やっぱり考え過ぎか。

だって神様は猫なんだし、それと智くんが結び付く筈が無い。

いやでも、猫が神様とか。

そもそもソコが常識外れだ。

こんな不思議な事があるんだったら、もっと不思議な事が起きててもそうそうおかしくないんじゃないだろうか。


翔「...どうかした?」


ぐるぐると考え込んでいたら、きちんと着替えた智くんが隅っこに立ってた。

どうしてそんな所にいるのかと聞くと。


智「ね、そこ。居ない...?」


顎で俺の後ろを差す。


翔「へっ」


な、なんだ。何が居ると言うんだ。


智「や、おばけじゃなくて」


なんだ、違うのか。良かった。


翔「あ...?」

智「ね、居るでしょ」


少し隙間の開いたドアから、人影が見えた。


その人影はチラチラと楽屋を覗き、怪しい光を放っていた。






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