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神様の願い事

第2章 秘密

《sideS》


智くんの首筋にあった紅い痕。

あれは、この間の夢の中で見た。

だって俺が付けたんだ。
夢の中で、淡い裸体を晒す智くんの身体に、俺が残した。


翔「夢、だよな…?」


どう考えたって夢なのに。
猫を抱いて眠って、裸の智くんが隣に居るなんて事ある筈が無い。


翔「見間違い...? 虫刺されとかかな…」


昨日からずっとこんな調子だ。
家に帰っても頭を悩ませ、ロクに睡眠もとれなかった。
起きてからも頭はその事が一杯で、今自分がどうやって動いているのか不思議なくらいだ。

でも気付けばきちんと仕事に来ていて。
目の前は既に楽屋なんだ。


ガチャ


翔「おはよ~...って、何やってんの?」


やっぱりまだ智くんしか来ていない。
その智くんはソファーに座って唇を尖らせて、指先で摘む何かに夢中になっている。


智「あ、翔くん。おはよ」

翔「それ何?」

智「今度はペンダントトップの結合部がね…」


俺が昔にあげたネックレス。
この間はチェーンを直してたけど、今度は結合部を直してる。


翔「壊れた?」

智「ん、でも直せそう」

翔「そんな直さなくても、また新しいのプレゼントするよ」

智「や、でも。コレがいいんだよね」


俺の事なんて全く見ない。
耳は反応して会話もちゃんとしてるけど、その目は指先で摘んだネックレスに夢中だ。
尖った唇が何よりの証拠なんだ。


翔「だってもう、随分古いでしょ」

智「ん~...でも。コレ気に入ってるし」

翔「そうなの...?」

智「なんかね、コレがいいんだよ。コレじゃなきゃ駄目なの」


その目でしっかり見つめて、綺麗な指先でしっかり摘んで。
唇を尖らせながら、新しいのはいらない、これがいいんだと言う。


智「...よし、ハマった」

翔「え?」

智「ふふ、直ったよ」


嬉しそうに首に付けながら、やっぱコレだよなあなんて、ニコニコと笑ってるんだ。


翔「そんなに気に入ってくれてるの...?」

智「当たり前だよ。だって、智のSでもあるけど、翔くんのSでもあるじゃん」


その言葉をどういう意味合いで言ってるんだろう。



ニコニコと笑うその顔は、何を思ってるんだろう。







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