
神様の願い事
第2章 秘密
「おかえり」
智「おかえりじゃねえし」
淡い光を纏った俺は、ぱあっと眩い空間に引き込まれる。
んで、気付いたら家に戻ってるんだ。
智「ねえ、結局コレなんなの? いつになったら俺は元に戻るの?」
「自分の幸せを見付けてからだと言うておろうが」
智「俺幸せだよ?」
「だから、そういう事じゃ無いと何度言わせておる」
なんで鏡と喋ってるんだ。
俺は頭がおかしくなったんだろうか。
「おぬしを見た時にピンと来たからのう。あ、この男に憑いてやるかと」
智「んで、その鏡買わせたの?」
「そうだ。インスピレーションを感じただろう?」
不思議な事にこの鏡、一目見ただけで凄く気になって、思わず衝動買いをしたんだった。
「ああこの男、このままでは本当の幸せに気付かず死んでいくのかと思ってな」
智「はぁ?」
「だからワシが、気付かせてあげようと思ったんだぞ? 感謝して欲しいくらいだぞ?」
智「んじゃとっとと教えてよ。そしたらもう猫にならなくて済むんでしょ?」
「自分で気付かなくては意味が無い」
智「はい?」
「只のそんじょそこら辺の幸せでは無いぞ? 本当の、幸せだ」
智「なにそれ...」
年寄りくさい話し方をする鏡は、俺に幸せを見つけろと言うんだ。
もうある筈なのにどうして気付かないんだ。
もどかしくてイライラすると。
智「んで、猫になるのはその幸せに関係あるの?」
「ない」
智「は?」
「ワシは猫が好きなんだ」
意味無かったのかよ。
「しかしおぬしには良く似合っておるぞ?」
智「困るんだよ。昼間も油断したら猫になりそうでさ」
「案じなくて良い。夜にしか変形しない様にしてある」
案ずるわ。
完璧な猫にならなくても、耳としっぽが生えてくるじゃねえか。
俺の幸せ。
ってなんだ。
