
神様の願い事
第7章 謎のオバケ
どういう事だ。
鏡の中の智くんは、俺の妄想じゃなかったのか。
翔「いやでも...」
でもリアルだとするとおかしいんだ。
だって鏡の中の智くんは、猫の耳や尻尾を生やしていた。
翔「ん...? 今、生えてたか...?」
今はどうだっけ。智くんの顔ばかり見ていたからよく覚えていない。
だけど思い返せば、生えてなかったような気もする。
翔「んん?」
だけど妄想だとしてもおかしい。
妄想だとすると、この間の松潤の電話の件が説明出来ない。
翔「電話...」
今かけたら、そのベッドに落ちているスマホは光るのだろうか。
翔「よ、よし」
ドキドキする胸を落ち着かせる為、俺は一息深呼吸をする。
それでもたいして緊張は解けなかったけど、震える指を押さえて智くんの番号を押した。
プルルル...
翔「ど、どうだ...?」
耳元に当てたスマホからは呼び出し音が響く。
それを聞きながら、俺は鏡の向こうに映るスマホに目を凝らした。
翔「嘘だろ」
そのスマホは、ほんの少し揺れ、目映い程の光を放つ。
翔「マジかよ...」
その光景に俺の頭はフリーズし、スマホを持った腕は力が抜けそうだった。
智『はい』
だらんと腕を投げ出そうかと思ったその時、耳元に智くんの声が聞こえた。
智『...もしもし? 翔くん?』
その声に驚き、真っ白になった頭を引き戻す。
すると、鏡の中から居なくなった筈の智くんが着の身着のままでスマホを耳に当てていた。
智『もしもし...って、っくしゅっ』
智くんはどうやらお風呂に入っていたようで、髪もびしょびしょのまま慌てて出てきたんだ。
翔「あ...、ご、ごめん。お風呂中に」
智『え...? なんでわかったの?』
翔「あ、いや。その... くしゃみ、してるから」
智『ああ(笑)』
それだけでわかるんだ、凄いねエスパーみたいと智くんは無邪気に笑う。
翔「エスパーでは無いけど...」
エスパーでは無いけど。
だけどわかるんだ。
見えてるんだよ。
今の貴方がどんな顔で笑ってるのか、俺には見えてるんだ。
