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神様の願い事

第7章 謎のオバケ

《sideS》



今日の智くんはなんだか少しよそよそしかった。
ぎこちないとでも言うのだろうか。
いつもと変わらぬ笑顔を向けてくるくせに、俺が近付くと無意識に距離を開けた。


翔「何かしたかな...」


折角変な空気を絶ったと思ったのにまたこれだ。


翔「避けられてるって訳じゃ、なさそうなんだけどな...」


そんな事を呟きながら寝室に篭っていると、目の前の鏡に色がついた。


翔「あ...、なんか喋ってる」


皆が不思議そうに見たこの鏡。
どうして智くんが映るようになったんだろう。


翔「え... ははっ、びびった。俺に文句言ってるのかと思った」


そこに映る幻想の智くんは、時折こちらを見ながら唇を尖らせた。


翔「俺の妄想なのにどうして怒ってんだよ(笑)」


ブツブツと唇を動かし、チラチラとこちらを見ながら睨みを効かせる。
その様子はまるで怒っているようで、俺は少し驚いたんだ。


翔「あれ...? でもこれ、今日あの人が着てた服だ...」


俺の勝手な妄想なんだから、俺の見たい柔らかい智くんを見せてくれてもいいのに。
なのに鏡の中の智くんは俺の希望とは裏腹にブツブツと怒っており、更には見覚えのある服をぽいぽいと隣に脱ぎ散らかしていた。


翔「...そう言えば、智くんの姿をした神様も同じの着てたな...」


服を脱ぎ散らかし、素っ裸になった智くんはその服を拾って鏡から消えた。
今の鏡に映るのは、ベッドとその上に放置されたスマホだけだ。


翔「スマホ...」


この間、松潤が智くんに電話をかけた。
あの時、この部屋にいる松潤と鏡の向こうの智くんは連動して。


翔「まさかな...」


盗撮でもしてるんじゃないかと変態扱いされそうになったから、誤解を解くのに必死ですっかり忘れてた。


だけどそうだ。


あの時俺が見た智くんは、本物の智くんだったんだ。




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