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神様の願い事

第4章 誤解




あの夜、気を取り直して2人で眠ったんだ。


なんだか気分が落ち込んだように心が重くなって、それを察知した翔くんが酒を振舞ってくれて。

猫の俺は、翔くんの掌の酒を呑んですっかり気分が良くなった。

それからもなんだかんだと話しながら酒を呑んだんだろう。
だけど気が付いたら猫の姿は解けて、俺は人間に戻ってた。

耳と尻尾を残したまま、俺は翔くんに抱き締められてたんだ。



元に戻った俺を、翔くんは神様のイタズラだと思った。
変身して俺になったんだと、そう思い込んだ。

そうやってなんだかんだと色々あったけど、最終的には“甘えん坊”になってしまった翔くんと一緒に眠りについたんだ。

なんだかんだって、一言で片付けたけど。

そこにはキスも含まれてて。

俺がうっかり微睡んでしまうような、熱いキスを翔くんはしたけど。

だけどそれに関してはわざと触れないようにした。

だってなんて聞けばいい?

“どうして俺にキスなんてしたの?”

そんな事言ったって、俺は変身しただけに過ぎない只の猫なんだし。

それに、聞いたところでどんな答えが返ってくるのか。

俺はどんな答えなら納得するのか。

翔くんの口から、どんな言葉を出して欲しいのか。

それすらわからないんだから。

聞くに値しない。翔くんに言わせるとそうなるだろ?



なのに。



智『ん...』


擽ったかった。


智『ん、ふ』


その擽ったさに、目を覚ましたんだ。


智『ぁ、な、に...』

翔『...ごめんね、勝手に触って』


俺の頬を大きな掌で包み、翔くんは首元に顔を埋めていた。


翔『どうしても、信じられなくて』


やっぱり変身したという結論は無理があったのだろうか。


翔『例え幻だとしても、智くんがここにいるなんて...』

智『ぁ...』

翔『こうやって俺のベッドに居て、こんな近くで... しかも、触れられるんだよ…?』

智『ふ、しょ、翔く...』


やっぱり俺を幻だと言うのに、その幻に触れる翔くんの唇はとても熱かった。


翔『ごめん神様』


掌もとても熱くて。


翔『少しだけ、触れさせて...』




その唇から出る掠れた低い声さえも、とても熱かったんだ。






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