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神様の願い事

第4章 誤解

《sideN》



しまったな。相葉さんの事だから変に誤解したかもしれない。


潤「相葉さん大丈夫かな。大した説明も出来なかったし」

和「あ~、大丈夫でしょ。それに説明なんて、どれだけ遡らなきゃならないのよ」

潤「まぁ、そうだけど」

和「それよりほら、ちゃんと聞いて」

潤「うん」


壁に張り付いて身を潜める俺達の少し前には大野さんがいる。
小さな呼吸をして、スマホを耳に当ててるんだ。


智「もしもし...」


今日は久し振りに5人揃った。
PV撮影で、さっきは3人で久しぶりだねなんて話しながら着替えをしてたんだ。


智「ええはい。今日、会えます?」


その時チラッと見えた。
鎖骨の辺りにほのかに紅い跡が。


智「...そんなに遅くはならないと思います。ええ、じゃあ、終わったらまた連絡しますね」


どうしたのそれ、何の跡? なんて聞くと。
“虫刺されだよ”なんてシラッと答えた。


智「ふふっ、その話はまたあとで...」


俺だって大人だし、あんなの聞かなくたってだいだい分かるんだ。
だけどさも答えを用意していたかのようにスラスラと答え、くるっと身体を翻しその跡を隠すかのように着替えた。


智「はい、じゃあまた夜に」


あの跡は虫刺されなんかじゃない。

人の跡だ。

誰かが大野さんに遺した、温もりの跡だ。


智「ふぅ...」


なのにどうしてそんな寂しそうな顔を見せるのか。
溜息をついて肩を落とすなんて。


潤「やば、こっち来る。戻ろう」

和「うん」


その跡を大野さんは鏡でこっそり見てた。
すると何やら気の重そうな顔をして、スマホを手に取ったんだ。

“ちょっとトイレ”なんて言って楽屋を出て。

その時の後ろ姿が何故か放っておけなかった。
楽屋から消えていく大野さんの背中を見てたら、潤くんが“行こう”なんて言って。

だから着いてきたんだ。


潤「誰に会うんだろ」

和「キスマークの人、かな...」

潤「でもそれにしちゃ重いよね、雰囲気...」


自分の身体に温もりを遺してくれた人に会うのでは無いのか。

もしそうなら、この重苦しい空気はなんなんだ。



それともあれは、温もりの跡では無いのだろうか。







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