
神様の願い事
第4章 誤解
「あの人って、好きな人の事...?」
翔「あ、漏れてた? ふふ、まぁ、ね」
ベッドに転がって毛布を纏い、潤んだ瞳と薄く開いた唇で俺に問う。
「こんな顔、しないでしょ」
翔「そうなのかな」
「だって、男じゃん。...女性とは違うでしょ」
そっか。神様は俺の好きな人が女性だと思ってるんだ。
まあ、言ってないし、普通に考えたらそれが当たり前なんだけど。
翔「...今日、一緒に寝てくれる?」
「え?」
幻なのに、離し難い。
翔「甘えさせてよ」
「あ...、ふふ、いいよ?」
馬乗りになる俺の下で、神様はきょとんとした顔を緩めて笑った。
「なんか、新鮮だね」
翔「え?」
「甘えんぼの翔くんて(笑)」
翔「ええ?(笑)」
いかにも智くんが言いそうなセリフ。
そんな言葉を聞いてしまうと、本当の智くんと一緒にいるんじゃないかと錯覚を起こしそうだ。
翔「リアルじゃなかなか言えないから、さ」
「ふふ、いいと思うよ? 普段も素直に言えばいいのに」
翔「いや無理だよ(笑)」
柔らかく笑うその顔は、智くんそのものだ。
思わずそれに見とれていると、神様は両手を広げニコッと笑う。
「早く寝よ。もうこんな時間」
翔「あ」
「ふふっ、おいで?」
まるで俺を甘えん坊の子供のように扱う。
広げた腕で俺を包み、頭をぽんぽんと撫でるんだ。
翔「ぁ、気持ちいい...」
「でしょ? 撫でられるのって、なんかいいよね」
智くんの形をした神様の胸で、思わず微睡んでしまう。
翔「抱いて、いい?」
「はっ?」
翔「いやいや、抱き締める、の方ね(笑)」
「あ、ああ、なんだ(笑)」
ああ驚いた、と胸を撫で下ろして今度は神様が俺の胸に納まった。
翔「ふふ、幸せ」
「これが? 男だよ?(笑)」
翔「でもこの温もり、凄く気持ちいいよ」
「...うん、そうだね...」
どうせなら、君の好きな人に変身出来れば良かったんだけど、なんて言うのに神様も気持ちよさそうに目を閉じてるし。
それを感じて俺もうっかりと笑みを零してしまうし。
本当の智くんじゃないのにこんなの。
なんだか少し罪悪感を覚えたものの、やっぱりこの温もりに癒されてしまったんだ。
