テキストサイズ

神様の願い事

第4章 誤解



「ぁ、ちょ」


ガクンと神様の膝が抜けた。


翔「え、ど、どうし」

「だから触っちゃ駄目なんだって...」


抱き締めていた神様は急に力が抜けて、俺の足元に崩れ落ちた。


翔「え、これ?」

「んぁ」


神様が纏った毛布の中に手を滑らせていた。
もっとぎゅっと抱き締めたくて、しっかりと体温を感じたくて。
つい素肌に触れようと手を滑り込ませていたんだ。

そしたら人の肌とは違う柔らかな感覚に触れて。
あ、尻尾かと思わずさわさわと撫でてしまった。


翔「大丈夫?」

「は、ぁ...、立てな...い...」


力なく崩れたままの神様はやけに色っぽく見えた。


翔「掴まって」

「ん...」


素肌でフローリングは冷たいだろうと、神様を抱き起こす。
力の抜けた手でなんとか俺を掴み、神様も足にグッと力を入れて立ち上がった。


翔「しっぽ駄目だったの? 知らなくて、ごめんね?」

「駄目って言うか、力が、入んなくなっちゃうんだよね…」

翔「ここ?」

「っぁ、だ、だから、触んないでって...」


つい、だ。
何もわざと触った訳じゃない。
つい興味本位で、素肌と尻尾の境目を撫でてしまった。


「ぅ、も、立てな...」

翔「あ」


またズルズルと崩れそうになる。
そんな神様を床に落とす訳にもいかず、なんとかベッドに倒れ込ませた。


翔「ごめんね...?」

「んん、そこも、だめ」

翔「え」


なんと敏感な。
謝ろうと、情けなく垂れ下がってしまった耳を撫でたんだ。
なのに触った途端、耳をピクピクと動かし頭をぷるぷると振った。


翔「あ...、じゃあ、ごめんね...?」


だから、ここなら大丈夫かと首を撫でてやった。
手で頬を掠め首を撫で、そのまま鎖骨に手を滑らせ優しく肩を撫でてやったんだ。


智「ぁ、ふ」

翔「へ」


神様はどこを撫でても敏感だった。


「も、今、力が入んなくなってるから、どこ触っても駄目だ...」


蕩けるような瞳。

この前鏡に幻想の智くんを映して見たのと同じような、潤んだ瞳。


翔「...あの人も、こんな顔するのかな…」

「あの人...?」


神様は、唇を薄く開いて呟くように話す。


智くんもこの神様のように、薄く開いた唇で、低くて柔らかい声を出すのだろうか。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ