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神様の願い事

第4章 誤解



翔「...やっぱりだよ」

智「え...?」

翔「嘘、ついたでしょ。これは夢なんかじゃない」


俺が微睡む寸前で唇を離した。
その翔くんの口から出る言葉は熱い吐息混じりで、思わずドキッとする。


智「嘘なんて」


ドキッとしたのは嘘を見抜かれたと思ったから。
決して翔くんの妖艶な目付きに胸が跳ねた訳じゃないんだ。


翔「ふふ、バレバレだよ」


目を細めて笑顔を浮かべるものの、その笑みは余裕に満ちていて。
やばいな、この猫耳をどう誤魔化せばいいんだと。
それどころか猫を抱いて眠った筈なのに、俺が裸で翔くんに抱かれているこの不思議。
それをどう説明すればいいんだと。


翔「変身できるんじゃん(笑)」

智「へ」

翔「神様でしょ? もう、驚かさないでよ。本当に智くんかと思っちゃったじゃねえかよ」

智「は...?」


ラッキーだった。

翔くんはたまにこういうところがある。
賢いから故なんだろう。
頭で理解できない事は、信じないんだ。

良かったよこれが相葉ちゃんじゃなくて。
“嘘っ!?”とか言ってすぐに信じるだろうから。


翔「でも、なんで智くんに...?」

智「え...っと、それは...」


そうだよな。
変身したところでなんで俺なんだ。
どうせなら翔くんの想い人とやらに変身するのが普通なのに。


翔「俺、言ってないよね? あの人の事...」

智「あ、ああうん。だから、誰になっていいかわかんなくて」

翔「あ、なに? 知らなくて変身したの?」

智「そ、そう! そうなんだよ!」


なんだこの状況。

未だ寝ぼけ眼の翔くんに跨がられて、俺は素っ裸でベッドのシーツと翔くんに挟まれてる。


翔「でもどうして? わかんないからって智くんになる必要なんて無かったでしょ?」

智「あ~なんか、うっすらと見えた気がして...」


濃厚なキスをしたかと思えば訳の分からない答弁をしてるし。


翔「見えた?」

智「や、なんかね。残像? みたいなのが...」


どこに見えるんだそんなの。


翔「ははっ、なんだ。超能力者みてえ」

智「へ?」

翔「さすが神様だよ(笑)」


俺の覚束無い受け答えでどう誤魔化そうかと困り果てていたが、何故だか翔くんは笑った。


それはそれは呆れたように、観念したように。


眉を下げて笑ったんだ。






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