
神様の願い事
第4章 誤解
智「ふ...」
クスクスと笑い出したな、夢だと思う事にしたんだと安心した。
智「ん、ぅ」
それがどうして唇を塞がれているのか。
智「は、ぁ...、ちょ、ちょっと...」
翔「あ、ごめん」
混乱した俺は取り敢えず翔くんの胸を押した。
翔「つい」
ついってなに。
翔「本当に夢かなって。確認しようと思って」
だからってキスするか? 普通なら頬をつねるんだ。
翔「いて」
智「あ」
しまった。つい翔くんの頬をつねってしまった。
翔「...痛いんですけど」
智「ご、ごめん」
翔「え、夢じゃないの?」
やばい。余計な事をしたかも。
智「ゆ、夢でも、痛くなったりするもんなんだよ」
翔「そう...?」
智「そ、そう」
怖い。翔くんが真顔で見てくる。
しかも少し睨みを効かせて、俺の真上から覗き込んで来るんだ。
翔「でもこれ」
その目線を外し、チラッと俺の頭を見た。
翔「夢って、こんなリアルな感触するかな…」
さわさわと俺の猫耳を撫でて眉をしかめてる。
翔「それにこの匂い。智くんの匂いだよ...?」
猫耳を撫でながら俺の首に顔を埋め、鼻を擦り付けながら匂いを嗅ぐ。
そんな翔くんは、疑惑の声色を出して悩むんだ。
翔「この唇だって、あの人のだ」
智「え、ちょ」
翔「柔らかくて、熱くて」
智「しょ...」
翔「あの時と同じだよ…」
疑いの眼差しを閉じ、それとは逆に唇を開いた。
その唇を俺に押し付け、“あの時”と同じキスをする。
翔「...やっぱりそうだよ」
智「んぅ...」
翔「甘い...」
お芝居と名を打って俺から仕掛けたキス。
そのキスはあっという間にひっくり返されて、翔くんのものになってしまったけど。
智「ぁ、は...」
翔「ふふ...」
“もう大丈夫”なんて言ってそのキスを冷静に止めたけど。
あれは、本当は冷静なんかじゃなかった。
焦ったんだ。
翔くんから繰り出されるキスがあったかくて。微睡んでしまいそうだった。
智「ん、ふ...ぅ...」
今もそうだ。
あの時と同じ、俺を惑わすキスを翔くんはしていた。
