
神様の願い事
第4章 誤解
翔「智くん...?」
やば。気付かれた。
翔「え... あれ、なんで...?」
智「あ」
そうだ思い出した。
翔くんと話をしてたんだ。
智「え...っと」
それがどうしてこうなったんだっけ。
話をしてたら翔くんが酒を出して。
“これ好きでしょ”なんて言って一緒に酒を呑んだんだ。
翔「あ... なんだ、また夢か」
智「え?」
翔「ふふっ、可愛いねコレ。似合ってるよ」
智「んぁ」
猫の名残を翔くんが撫でた。
俺の頭に生える耳を、ふふっと笑いながら愛おしそうに撫でたんだ。
翔「まるで本物みたいだ...。凄く温かい...」
ああそうだ、違うわ。
俺が翔くんと酒を呑んでたんじゃない。
一緒に呑んでたのは猫の俺だ。
翔「しっぽも温かいんだね」
智「ちょ...」
耳と尻尾を生やしてるもんだから、翔くんは幸いにも夢だと勘違いしてる。
そうだ、このまま夢で突き通せばいいんだ。
翔「...それにしたって、リアルだな...」
智「っ、さ、わんないで」
翔「この温もり、この柔らかさ...。それに、この匂い」
智「ぁ」
翔「まさか」
まさかってなんだ。これは夢だ、夢なんだ。
翔「神様、変身しちゃった…?」
智「へ...」
背後から俺をぎゅっと抱き締め、クンクンとうなじの匂いを嗅ぐ。
だってこの匂いは智くんの香りだとかなんとか言って、張り付いて離れないし。
智「だから、夢でしょ...」
首元の擽ったさを我慢しているというのに翔くんの手は俺の身体を滑って、生身の温もりを確かめようとしてる。
智「っく、擽ったいって」
俺の声を聞いてその手をピタッと止め、そっと頭に触れる。
慈しむように俺の猫耳を撫でて、後ろで少し首を捻ってる。
翔「これ、本当に夢...?」
捻った首を伸ばして俺の顔を覗き込んだ。
目がバチッと合ってしまった俺は、何故かその視線を逸らせなくて。
智「...夢、だよ」
固まったまま、声を発したんだ。
翔「やっぱそうだよな…?」
智「そ、そうだよ」
翔「耳、生えてるしね...」
なんだこの間と同じかと、翔くんは少し呆れた顔をした。
翔「またコラボしたのか(笑)」
と思ったら急にクスクスと笑い出して。
コラボってなんだ。
