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神様の願い事

第3章 変化



「あ、やっぱり」

翔「え?」


ふぅと溜息を吐くと、諦めたのか“もういいよ”と言う。


翔「え、なにこの鏡。何か知ってるの?」

「いや...」


“やっぱり”と呟いたのに。


「で、なんだった? また何か、悩み事...?」


勝手に鏡の話を締めて、俺の目的を聞こうとする。


翔「いやだから(笑) 今日は別に呼んでないんだけど...」

「へ」


心の中でお願いをしただけなのに。
あれも呼んだ事になるんだろうか。


「え、だって来たじゃん」

翔「え? あ、うん、そうだね」

「呼んだでしょ?」

翔「いや、呼んだ訳では...」

「じゃあなんで僕はここに来てるの」

翔「知らないよ(笑)」


ひとしきり押し問答をした後、神様は怪訝そうな顔をして鏡を見てる。


翔「その鏡そんなに気になるの?」

「う~ん...」


相当考え込んでるんだろう。
後ろから見た神様は、その小さな頭を左右に傾げて唸ってるんだ。


「なんかすっごい強かったんだよね…」

翔「え?」

「物凄い力で引き寄せられたような、さ」


引き寄せられるとはなんだ。
神様は自分でやってくる訳では無いのか。


翔「えっ、と。ここにはどうやって...?」

「だからなんか、急にポーンって」

翔「は?」


ぽーん?

確かに神様は俺の背に跳ね返って転がってたけど。

確かにあったかいボールをぶつけられたような、そんな感じだったけど。


翔「...聞いていい? いつも自分の意思で来てるんじゃないの?」

「違うよ」

翔「へ」

「誰か呼んでるなと思ったら身体が勝手に動くんだよ。まあ、動くってか、動かされてるような感じだけどね」


まさかの自分の意思で無いとは。
だからいつも少し面倒くさそうな雰囲気を出してたのか。


「でも今日は、身体が動く前にもの凄い勢いで引き込まれたんだよね…」


だからか。

だから神様は跳ね飛んで、俺の後ろで転がってたんだ。


だけど商店街ならなんとなく想像出来るんだ。
フラフラと歩いて助けを求める者の前に姿を現してるのかな、なんて。


だけどここは家だ。

鍵も掛かってるし、なんなら防犯意識だってクソ高い。



なのにこの神様は、どこから吹っ飛んで来たんだろう。






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