テキストサイズ

神様の願い事

第3章 変化

《sideS》



ふふ。ぼーっとしてる。


楽屋でもぼーっとしてる姿はよく見かけるけど、家でもこうなんだ。


翔「全く動かないな」


ベッドに腰掛けた智くんは微動だにしない。
座って背を丸めて、ビクともしないんだ。


翔「何考えてるんだろ...(笑)」


不思議な事にこの鏡、俺の姿を映し出し普通の鏡の役割は十分に果たすが、明らかにおかしな役割も持っていた。

智くんに会いたいな、今何をしてるんだろな、なんて考えながらふと鏡を見ると、ここに居ないはずの智くんの姿が見えるようになるんだ。


翔「あ、なんかブツブツ言ってる」


台詞でも覚えてるのか。
微動だにしないくせに、唇だけはボソボソと動いて何かを話しているようだ。


翔「声、聴けたらいいのに...」


音は聞こえないんだ。
この鏡に映し出されるのは映像だけ。

それもリアルな映像じゃない。

俺の脳が勝手に作り上げた、幻想のようなものだと思うんだ。


翔「お、今日も出た(笑)」


ぴょこっと生えた黒い耳。
ゆらゆらと揺らめくしなやかな尻尾。

その尻尾を身体に巻き付け智くんはベッドに転がる。


翔「俺の脳、やべえな」


ほら、こんなのリアルじゃないだろ?

だって猫とコラボした智くんが見えるんだ。


翔「前に見た夢の印象が強すぎたのかな...(笑)」


神様を抱いて眠った筈が、目を覚ませば裸で転がる猫耳姿の智くんが居たんだ。
その夢があまりに衝撃すぎて、未だに俺の脳はおかしな幻惑を見せてるんだ。


翔「触りてえな...」


幻想だと分かってるけど。
だけどあの夢の感触を覚えている。

温かくて柔らかで、しなやかでツヤツヤしてて。


翔「萌えどころじゃねえぞ…」


しっぽで器用に脇腹を掻きながら智くんは欠伸をしてる。

んん~っと両手を伸ばし、足をピンとして。

気持ちよさそうに伸びをしてるんだ。


翔「寝そう...(笑)」


手をお腹に乗せ、目はとろんとしてきた。



出来ることなら今すぐ傍に行って、捲れた毛布を直してやりたい。

寝転ぶ智くんの隣に腰掛けて、頭を撫でて寝かせてやりたい。



今すぐにでも、貴方に触れたいんだ。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ