今日も明日も
第65章 見えない鎖 part Ⅵ
結局あの後はかずくんについては何も話さないまま
だけど嫌な雰囲気にはならないようにと、先輩はネコの話をたくさんしてくれていた
世話の仕方や、遊び方
先輩も、俺にもかずくんにも伝わるように話してくれるからか
かずくんも真剣に先輩の話に耳を傾ける
返事をする事は出来ないけれど
目を見れば、一生懸命聞こうとしているのが分かる
そして先輩の方も
そんなかずくんに気付いたようで
時々敢えて繰り返して分かりやすく教えてくれたりもした
「連れてくるから待っててな」
俺とかずくんを車に残し、先輩が足早に家に入って行った
「かずくん、大丈夫?」
やっぱり相当緊張していたんだろう
先輩が車を降りた後、大きな息を吐いた
「ごめんなさい…」
「謝る事ないって。凄く頑張ったね」
「…え?」
「だって外に出るのも、他の人に会うのも、今日が初めてだったでしょ」
そんな事を言いながら
出なくていい、と心の何処かで思う
他人になんか会わなくていい、と思ってしまう
俺も大概ヤバい奴だ
「かずくん、ネコは好き?」
そんな後ろ暗い気持ちを隠してかずくんに笑い掛けると
「はい」
どことなく、かずくんが嬉しそうに頷いた
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