今日も明日も
第57章 見えない鎖 part Ⅰ
冗談でも何でもなく、本当に開けられないらしい
そこまで体力落ちてるのに風呂なんて、可哀想だったかな
でもあのままってのもなぁ…
どうするのが最善だったなんて、今さら考えても遅いけど
「貸して。開けてあげる」
「え…」
ひょい、と返事を待たずにそれを取り上げ、開けてから彼に渡すと
「あ…ごめんなさい…」
申し訳なさそうに受け取った彼は、…だけど余程喉が乾いてたのか夢中になってごくごくとそれを飲んだ
「おいしい…」
ぷは、と唇を腕で拭う
そして初めて、小さく
本当に微かにだけど
確かに笑顔を見せた
「もっと飲む?」
「いえ…、もうお腹いっぱいです」
ああ、全部飲んだのかな?なんて何気無くペットボトルを見て、驚いた
だって半分も減ってない
あの勢いだからてっきり飲み干したと思ってた
「全然…飲んでないじゃん」
「え?」
きょとんと俺を見た彼は本当に不思議そうな顔をしている
「飲み…ましたよ?」
おいおい、マジかよ
こんなんでお腹いっぱいって、どういう生活してたの?
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