今日も明日も
第57章 見えない鎖 part Ⅰ
熱のせいもあるだろうけど
どこかぼんやりとしている彼に
「目、覚めたみたいだね」
意を決してそっと話し掛けたら
「…っ!」
ビクリとこちらを振り返った彼は、途端にガタガタと震え始めた
「え、ちょ…、どうしたの?寒い?」
「やめ…っ、来ないで……!」
宥めようと伸ばした俺の手を振り払った彼がボロボロと涙を溢した
そして今度は
「ごめ…なさ…っ」
掛けていた布団を握り締めて必死に謝ってくる
何の知識もない俺は、ひたすら “大丈夫だから“ と彼に伝え続けるしか出来なくて
それでも30分程頑張ってみたら、漸く彼も落ち着きを取り戻してくれた
「怖い?」
「…少しだけ」
「何もしないから、安心して」
「はい…」
そうは言うものの、彼の声はまだ怯えている
そりゃそうか
目が覚めたら知らない家に連れ込まれてるんだもんな
でもさ、あんなとこにいるよりは何倍もマシだと思うけど
聞きたい事はいっぱいある
だけど今はまだ、彼の体を何とかする方が優先だった
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