
出逢いは最悪だったけれど。
第2章 問題児、大野
屋上のドアを開け、
あたりを見渡す。
見つけた。
寝転がっている生徒がひとり。
あれが大野智か。
近づいて、
彼の顔を覗きこむ。
突然の気配に驚いたのか、
彼は目を開けると、
何度が大きく瞬きを繰り返した。
「はじめまして、大野くん。俺は今日から302の担任になります、櫻井翔です。」
教室でした挨拶を、もう一度繰り返す。
だが彼は聞いているのかいないのか、
こちらをじっとみつめているだけで
何も言わない。
「大野くんはなんで屋上にいるの?」
聞いているのか?
それとも聞こえないふり?
何も答えない彼。
だが痛いほど視線を感じる。
「なにか嫌なかことがあるならいつでも相談」
乗るけど、と云いかけた言葉は喉に詰まった。あっという間に世界が反転して、俺の真上には大野。
え?ナニコレ?
俺もしかして、組み敷かれてる?
「先生、イケメンだね」
ふにゃって笑う大野。
かわいい。
かわいいがやっていることはかわいくない。
「俺、先生みたいなイケメンすごくタイプ」
言いながら大野は、制服のネクタイを解き、それで俺の両腕を縛ろうとしている。
いや待て、
待て待て待て待て!
「ちょ、待って!」
慌てる俺におかまいなしの大野。
「大丈夫、先生は挿れる側だからきもちいだけだよ?」
ああ、そうか、なら
「いいだろう。ってなるわけねぇぇえだろ!」
大野を思いっきり突き飛ばす。
細い体格の大野はいとも簡単に突き飛ばされ、痛みに顔をしかめている。
こいつ、
まじでヤル気だった。
「いったいなぁ、もう。先生、ノリ悪いね。」
反省するそぶりもない大野。
いや、こいつにはそもそも、悪いことをした自覚がないのか。
「こんなことノリでやるもんじゃない。それより教室にもどりなさい。」
教室という言葉に、
大野から笑みが消えた。
「やだ。俺は教室にはいかない。」
