
10年恋
第6章 第六章
「屋上に来て寝転がったのはあの日以来だな~」
「たしか俺、翔くんに無理やり連れ去られて屋上つれてかれたんだっけ」
「無理やりって」
まあそうなるか、翔くんはつぶやきながら苦笑いした。
翔くんが転校してきた日を思いだす。
あの日初めて翔くんを見たとき、目が離せなかった。
翔くんの大きな瞳に吸い寄せられていたし、翔くんもこちらを見つめていたから、目をそらすタイミングが分からなかった。
「でもね、あの日ここで智くんと仲良くなれたおかげで、俺に初めて親友ができたんだ、4人も」
ちらりと顔を横に向けると、寂しそうな表情なままの翔くんが、まっすぐ空を見つめていた。
そういえば翔くんの過去を知らない。転校してくる前の翔くんを。
でも彼の表情があまりにも寂しそうだったから、なにも聞かないことにした。
「俺も翔くんに出会えてよかったよ、おれだけじゃない、みんなそう思ってるよ。」
なにかがおおきく変わったわけではない。けれど、翔くんの存在はみんなにとって大きなもの。俺にとっても、、、ニノにとっても。
「だからこれからも、ニノのことよろしくね。」
起き上がって翔くんの顔をのぞくと、彼は大きな目をまん丸にして口は大きく開いて、なんとも面白い顔をしていた。
俺が気づいてないとでも思っているのだろうか?
「ニノはあまり表には出さないだけで本当は甘えたがりだから」
ちゃんと甘えさせてあげるんだよ、って忠告。
「え!!?ま、ま、まって、なんの話?!」
翔くん、まだしらばっくれる気か?
あ、もしかして二人は内密に付き合うことになってるのかも。
「あー大丈夫だよ、だれにも言わないから」
「いやそうじゃなくて」
え?違うの?
「そうじゃなくて、俺とニノは
付き合って」
翔くんの言葉は授業を知らせるチャイムでさえぎられた。
「まあとにかく幸せにね!俺教室もどる!」
「え?!ちょ、ちょっと!俺も戻る!」
このとき翔くんの頭の中が大混乱になっていることを俺は知る由もなく、二人で廊下を走り、教室へ飛び込んだ。
