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泣かぬ鼠が身を焦がす

第6章 病に薬なし


立ち上がって杉田さんの横まで行くと、俺の方に手が伸びてきた


ベッドに行くから、手をかして欲しかったのかな


と思ってぼんやりしていたら


「!?」


突然身体を引き寄せられた


「な、なに?」
「許してくれ。お前の元気がないのが、堪える」
「……風邪が俺のせいだって言いたいのかよ」


心にもない毒を吐いてしまって「まずい」と心の中で思ったんだけど、何でもなかったかのように杉田さんは「違う」って言いながら俺を抱きしめ直した


「昨日からずっと、お前に悪いことしかしていない。その責任を感じてる」
「昨日のは別に杉田さんのせいじゃないってば」
「それでも、その原因を作ったのは俺だろう」
「……」


やっぱりな、とため息を吐く杉田さんに俺は何も言えない


「今日の会社のことだって、お前に酷いことを言ってしまった」


ひたすら落ち込んで暗いことばっかり言う杉田さん


あぁぁぁぁぁ
なんでこんな

俺だって


「俺だって、杉田さんに元気がないの堪えるよ。いつもそんなこと言う人じゃないじゃん」
「……」
「風邪治してさ、なんか美味しいものでも奢ってよ。何か負い目に感じてんならそれでいいから、ね?」

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