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泣かぬ鼠が身を焦がす

第31章 秋風


優しく撫でられて、きっと猫ならゴロゴロ言ってるところだと思う

人間だから言わないけど


「……」


でも胸がきゅんきゅん鳴って苦しい


「なに?」


だから何か用かって拓真さんに突っかかってみる

そしたら


「俺もどれだけ体型が変わったとしても純が好きだ」


と言われた


「俺も」って
なにそれ


「俺は別に、そんな風な意味で言ったんじゃない」
「そうか」


なんだよ
その俺の言葉の意味なんて全部わかってますって感じの笑みは

むかつく


俺が拓真さんの胸のあたりに視線を落とすと拓真さんが


「まだ腹は痛いか?」


と聞いてきた


「……大丈夫」


俺がそう言うと、拓真さんはもぞもぞ動いて俺の方へ寄ってくる


「な、なに……」
「今大丈夫って言っただろう。もう少しくっつきたくなったんだよ」
「なんだ、よ……それ……」
「腹、痛くないんだろ?」
「……痛くは、ない……」


拓真さんは俺を気遣ってか、お腹の方には触れないようにして俺を包んだ

胸のあたりまで拓真さんに抱き締められて「はふ」と満足気な息が俺から漏れる


「やっぱりこの方が安心するな」
「……そう」
「あぁ」


俺は結局太ったこと気にしてるとか言えないまま、拓真さんの腕の中で眠った

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