
泣かぬ鼠が身を焦がす
第21章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー)
というか、あるわけがありません
目の前に聳え立つのは、著名な方が数多く贔屓にされているホテル
本日はその最上階にあるレストランに行かれる、と……?
あのお店は私のようなただの会社員が行くようなお店ではありません
お値段だって……
「!」
大変です
手持ちの金額では足りないかもしれません
「三村様、すみません。銀行に寄らせて頂いても宜しいでしょうか?」
「銀行?」
「申し訳ありませんが、手持ちがあまりございませんので……」
私が頭を下げつつ申し上げると、三村様は何でもないように笑われました
「いいよ。俺が払うから」
「!? そんな……っ」
「もともとそのつもりだったから」
謝罪で払って頂ける金額では、と私が拒否しようとしますと「いいから、早く行こう」と三村様に手を引かれ無理矢理入らされてしまいました
「……」
エレベーターで上がりながら、私の心臓は緊張で早鐘を打っています
なにが「大したとこじゃない」んですか
日本全国で見ても間違いなくトップクラスのホテルですよ、ここは
それにしてもここの会計を自分がなんて、三村様は副業として他に稼ぎがあるのでしょうか……?
