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泣かぬ鼠が身を焦がす

第12章 盲目


「それでもいい。俺が杉田さんのこと好きで、ちゃんと付き合ってるし!」
「へぇ? 付き合ってるんだ?」


藤本の目が、意地悪そうに光る


「上手く使われてるだけじゃなくて?」
「なんだと?」
「だって、ウリなんてしてたノラをこんなデカい会社の社長が好きになる? 当然婚約ぐらいしてるでしょ、女と」


確かに、そう……だけど


「そもそも、本当に好きって言ってもらえた?」
「……」


あ……

俺、杉田さんに好きなんて
言ってもらってない


言い返せなくなった俺を見て藤本は微笑んだ


「まぁいいや。とりあえず、早く帰ろっか?」


でも、藤本のところに戻るなんてしたくなくて


「はぁ? 嫌だよ。つか、帰るっても今の家はここなんだけど」


と強がって言った

でも藤本にそんな強がりが効くはずもなく


「なに言ってるの? ノラ。君に権利なんてないよ」


藤本が手を叩くと、それを合図に部屋に二人組の男が入ってきた


「わっ……!? 何……こ、れ……」


ドラマのような展開に驚くけど、そんな暇はない

口元に白いハンカチを当てられて、俺の意識はすぐに暗闇へと落ちていった

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