
泣かぬ鼠が身を焦がす
第9章 磯の鮑の
くっそーーー!!!
なんで俺がこんなこと!!
そう思いつつもこれ以上反論したところで俺の負けは確定しているから、諦めて杉田さんに手を伸ばした
きっちりと着られたスーツのワイシャツはしっかりと上までボタンがとめられていて、ネクタイもきちんと締められている
「……っ」
自分がつけたこともないネクタイは、解くのが案外難しくて苦戦してしまう
なにこれ
どうなってるわけ?
杉田さん簡単に解いてたじゃん!
俺が少しイライラしだすと、杉田さんの口から漏れた息が俺の手にかかった
「なっ……笑うなよ!」
「笑ってない」
「いーや笑った!わかりやすい嘘つくな!」
ポーカーフェイスになんて騙されてたまるか!
笑ったのなんてみえみえだっつの
怒っている俺に、杉田さんは勘弁したように微笑む
「悪かった。頑張ってるなって思ったらつい」
「人が頑張ってるの見て笑うなんて、人間としてどうなのそれ」
あ……あ!!
解けた!
そうこうしてるうちに俺は漸くネクタイを解くことに成功して、杉田さんの首からシュル、と引き抜いた
「出来た!」
自慢気に杉田さんにネクタイを掲げると、杉田さんは「そうだな」と言って俺の手からネクタイを奪う
