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泣かぬ鼠が身を焦がす

第8章 網の目にさえ


俺ってこんな子だったっけ……
かわいくねー……

こんなんじゃいつか呆れられるかも
もうちょっとここにいたいのに


「……」


俺、次に行く当てないとかって理由じゃなくて
ここにいたいって思ってるんだ


片腕を閉じた瞼の上に置くと、視界が遮られて真っ暗になった


どうしたんだ、俺


もう1度溜息をつくと、扉が静かに開く音が聞こえてきた

近づいてくる足音に、響く低くて優しい声


「ノラ、寝たか?」
「……」


その声にちゃんと返事したいのに、上手く話せる自信がないから無視した


「寝た、か」


確認のように呟かれた言葉は、俺に言ってるようで
きっと寝たフリしてるのなんてバレてるんだろう

だって


「じゃあ、勝手に身体拭くぞ」


わざわざちゃんと声掛けてくれるし
触り方も、すごく優しい


「…………」
「次、中も掃除するから。少し我慢してくれ」


俺の態度なんて気にしない風な杉田さんは、ひたすら優しく俺の身体を拭っていく

そして全箇所拭き終わると、俺に服まで着せてきた


全部やらせるとかだめじゃん俺
俺は杉田さんに何にもしてあげられないのに


「おやすみ、ノラ」
「……」

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