
霧島さん
第2章 お久しぶりです、霧島さん
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男が与えてくれたご飯を味わう余裕なんてなかった。
お腹に優しい和食で心は少し落ち着いたけれど、気づけば男の部屋のベッドで、半裸で密着し合っているその状況がうまく飲み込めずにいる。
「あの窓が直るまで、暫く俺の部屋で過ごしたらいいですよ」
「…脱がしながら普通に会話しないでください」
相変わらず、志月蛍はマイペースだけれど…。
呆れつつも小さく笑っていると、志月蛍が後ろから私の肩に頭を預けてきた。
「これでも緊張してるんです」
「…そ、そうなんですか」
意外だ、と思う。
爽やかな笑みを浮かべながらも、のらりくらりと上手くやり過ごしているイメージだったから、こういう時もさらっと出来るのだと思っていた。
「…霧島さん、このまま流されてくれますか」
肩に顔を埋めたまま、志月蛍が私の手をぎゅっと握る。その手は少し震えていて、私の胸はきゅう、と締め付けられた。
ごめんなさい、先生。
「もう、戻れないくらいに」
ーー戻れないくらい、私の心はこの男に引っ張られてしまっている。
何故と聞かれれば答えられない。けれど、柵を全てとり拭うような志月蛍の温もりを、私は自ら求めてしまっている。
「ん…ッ、」
私が答えてすぐ、志月蛍が後ろから私の顎を掴んで、そのまま優しく唇を塞いだ。
そしてちゅる、と熱い舌が唇を割って入ってきて、口内をゆっくりと犯していく。その間も、志月蛍の右手は私の手を握っていて。
握り返すと、更に深まるキスに私は酔いしれる。
