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霧島さん

第2章 お久しぶりです、霧島さん




え、何の日って…引き篭もりしてる人に行事なんて関係ないから全然わからない…。


わからずに首を捻っていると、志月蛍は「目、瞑ってください」と言って可笑しそうに笑った。



…なんだか調子が狂う。まんまとこの男のペースに巻き込まれている気がする。



不服に思いながらも目を瞑り、温かいお湯を待つ。



ーーーけれど、待っていたその熱はいつまで経っても来なくて。



ちゅ、



代わりにとでもいうように唇におりてきた熱に、私は固まることしかできなかった。



「…え、」


すぐにその熱は離れていったけれど、ジンジンと余韻は残っていて。


まだ至近距離にいる志月蛍を、呆然と眺める。



「これ、誕生日プレゼントってことで」



「た、誕生日…?」



「そう、今日俺の誕生日なんです」


…え、だからキスしたの?

…というか私のキスってプレゼントになるの?



「ふはっ混乱してます?」


「あ、当たり前です」


誰のせいで思考が追いついてないと思っているのか。この男の頭をはたきたい衝動に駆られながらも、そんな力はあらず…。



「もう一回、してもいいですか?」



「え!?!だっ駄目に決まってーーー」



強引に塞いでくるその唇にも抗うことはできなかった。



「〜〜ッ」



ーーー本当に、触れるだけのキス。なのに、どうしてこんなに心臓がバクバクと動くのかわからない。



下唇を軽く噛んで離れていったその薄い唇が、全てを奪っていったかのようだ。


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