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霧島さん

第2章 お久しぶりです、霧島さん




やっぱり聞こえてたんだ!!と悶える私に構わず、志月蛍は米俵の如く私を担ぎ上げる。


しかし、私はそれを気にかける余裕はなく、一番気になることを男に問いかけることにした。


「…あの時の壁の音、やっぱり偶然じゃなかったんですね」


「さあ」


「…誤魔化してるつもりですか、それ」


「君がそう思うのならそうじゃないですか?」


「……」


ぼんやりとした答えにモヤモヤするけれど、不思議と苛々は起きなくて。



「はい、到着」


適当な返事と違ってそっとお風呂のふちに下され、その差に戸惑ってしまう。


それだけじゃない。


――もっと、触られたら気持ち悪くなると思っていたのに。



「って、フラフラしてるじゃないですか。やっぱり一人じゃ危ないかもしれないですね」


「っい、いいです。もう、大丈夫ですから」



志月蛍の振りまく心配そうなオーラを、全力で突き放す。


何故かわからないけれど、心の中で大きく警鐘がなっている。


これ以上、この男が踏み込んでくるのを許してはいけないと。


「運んでくれてありがとうございました」



力のない腕で、離れてほしいと男の胸を叩く。


「っ」


けれどその腕は簡単に捉えられ、背けていた顔も無理矢理戻されてしまった。




「困ったときは助け合うのがお隣同士でしょう」




カンカンカンと、頭の中で大きく鳴り響く警鐘。



「何も聞いていない。君のその首の痕だって、どうしてできたのか知らない。ただのお隣さんなんです」


「―――…」


「困った時は、俺を頼ってください」



さら、と志月蛍の大きな手が私の髪に触れ、そのまま手が服へとのびる。




頭の中の警鐘は男が近づくにつれ大きくなって、


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