
霧島さん
第2章 お久しぶりです、霧島さん
「お久しぶりです霧島さん。生きてますか?」
「えっ?!!……えっ?!!!!!」
突然の訪問者に頭がついていかない私は、バキバキになった木を土足で踏みつけているその男――志月蛍を、唖然と見ることしかできなかった。
この男、本能的に危険だと感じていたけれど……。
「あれ、以前より痩せました?」
「うわ!!!ささささ触らないでください!!!!」
危険なんて言葉ではおさめられない!!!
「とっというか当たり前のように窓を玄関代わりにしないでください…ッ!!どうしてくれるんですかこの窓…!!」
私の頬に触れてこようとした志月蛍の手を払って、ずざざっとベッドの端に逃げ込む。
すると志月蛍は不満そうな顔を浮かべて苦笑した。
「心外ですね。まったく物音がしないから心配になったんです。どうしたんですかこの窓」
「どうしたんですかは貴方の常識のない頭ですよ!!」
本当に、どうしたらこんなことができるんだ。
普通物音がしないからってここまでするだろうか。
「というか、どうして私の名前…、」
「ああ、管理人さんに聞いたんです。霧島さん、有名人みたいで。すぐに教えてもらえました」
よいしょ、とバキバキの木をベランダに運び出す志月蛍を横目で見ながら、プライバシーとは。と考える。
でも、そうだろうな。家賃をちゃんと払っているから何も言われないものの、扉をあんなにがっつり施錠していたら不気味に思うだろう。
この窓を見られたらそうはいかないだろうけれど…。
