
不透明な男
第3章 自覚の無い男
なんだコイツ
可愛いな…
うっかりそんな事を思った俺は、少し意地悪をしてやりたくなった。
智「ほら、もうちょっとだよ。」
翔「うう…」
智「俺にタッチしたら許してあげる。」
翔「許すってなんで…」
智「ほら、足出して。」
翔「許して貰わなきゃいけない様な事、なんかしたかなぁ…」
ブツブツと言いながらも翔は素直に足を伸ばして歩き出す。
智「翔くん…震えてるよ(笑)」
翔「だ、だって…」
智「プルプルしてる(笑)」
震えながらも一生懸命に歩いてくる翔を、俺はニヤニヤして見ていた。
智「やっぱり高いところ怖いんだ。」
翔「う…」
智「かーわい」
翔「!」
智「翔くん…青くなるか赤くなるかどっちかにしなよ。体おかしくなっちゃうよ?」
翔「そっ、それは貴方が!」
勘弁してよと言いながら、翔は俺にもう少しの所まで来た。
智「ほら、手、伸ばして…」
翔「う、うん」
智「怖かったら、目、瞑ってていいから。」
翔「はい…」
翔はギュッと目を瞑ると、俺に向かって手を伸ばす。
翔の小刻みに震える手が俺の胸に触れる。
智「はい、到着。」
その小刻みに震える手を引き、翔の体を俺の腕の中に納めた。
