
不透明な男
第3章 自覚の無い男
翔は両手で自分の頬をパンパンッと叩く。
翔「お、屋上でも行きましょうか。」
智「屋上?」
翔「気分転換が必要でしょう。」
お前がな、と思いながら俺は俯く。
翔「思い出す為には刺激が必要ですから。」
智「そなのか」
翔「ずっとベッドの上じゃ飽きるでしょうし、ね。」
智「だね」
さっきまで茹でダコだったのに
急に医者みたいな事言い出しやがる…
まぁ一応医者なんだけど。
智「たかっ」
俺は開放感からか両手を広げて策まで走り出す。
翔「この病院、高層ですからね。」
智「きもちい~っ」
俺は、うーんと伸びをする。
翔「気分転換になりそうですか?」
翔の声が遠くから聞こえる。
智「…なんでそんなとこにいんの?」
翔「えっ」
智「こっち来なよ。きもちいいよ。」
翔「あっ、そ、そうですよね…」
屋上のど真ん中に立ち竦む翔が、おずおずと片足を伸ばす。
智「あっまさか」
翔「えっ」
智「高いとこ…怖いの?」
翔「そっ、そんな事は!」
亀にも負けそうだった翔の歩くスピードがグンと上がる。
スタスタと歩いて俺の少し後ろでピタッと止まる。
智「もうちょっと」
翔「え」
智「ここまで」
俺は、策に凭れ掛かりながら隣をポンポンと叩く。
翔「う…」
智「翔くん…」
俺は翔の顔を覗き込む。
智「顔が… 青いよ?」
さっきは真っ赤だったのに今度は青ざめている。
カメレオンのような反応を示す翔が可愛く思えた。
