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不透明な男

第3章 自覚の無い男


不意に、翔は俺の額に手を伸ばすと俺の目に掛かる前髪を掻きあげた。


翔「少し…髪が伸びましたね。目が悪くなりますよ。」


俺は、見下ろす翔を見上げながら言う。


智「そう…?まだ1週間くらいでしょ?」

翔「あ、ああ、そうでしたね。」


気のせいかな…と翔は俺から目を逸らし手を引っ込めた。


翔「ところで、家は思い出せたんですか?」

智「あ~」

翔「まだなんですね?」

智「うん…」

翔「では、もう少し入院されますか?」

智「や、でも…苦手なんだよね…」


何が?と聞く翔に答える。


智「看護師。」

翔「女性が苦手なんですか?」

智「や、そういう事じゃない。俺は女は好きだ。」

翔「じゃあ何が…」


なんだか皆、俺の事をヘンな目で見てくる。
なんだか取って喰われそうで怖いんだ。そんな気がする。と翔に伝えた。


翔「あぁ。」


プッと翔が笑う。


智「笑い事じゃないよ?」

翔「それは…仕方ないですよ。」

智「なんで」

翔「貴方は自覚が無さすぎる。」


あ、これ兄ぃにも言われたなと思いながら翔の話を聞く。


翔「その上、警戒心も無いときた。」

智「何を警戒すりゃいいの」

翔「そんなだからですよ。諦めましょう。」

智「ええ、やだよ~」

翔「私が目を光らせておきますよ。」

智「研修医のくせに?」

翔「う…」


真面目なのにちょっと抜けてる翔がおかしかった。


コイツ面白いな…


俺はつい笑いが吹き出てしまった。


智「プッ、くっくっ」

翔「ちょ!何笑ってるんですか!」


反抗するくせに、翔も俺につられて笑い出した。






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