テキストサイズ

不透明な男

第13章 胸裏






社「成瀬」

智「最近特に忙しそうですが、きちんと休まれてますか?」


このことろ社長は忙しくて、外に出てばかりだった。
社に戻ってもなんだかんだと仕事がある様で、任務に就く俺とすれ違う時にスキンシップを少し取る程度だった。

数いるBGの中から俺を見つけて俺だけに向かって歩いてくる。
俺の目の前に立ちはだかると、しっかり頼むよと言いながら俺の肩を叩いたり、背を撫でたり。
時には手を握って笑顔を向けてきた。


社「こんな風にお前を社長室に呼ぶのも久し振りだ」

智「ふふっ、呼ばれるの、久し振りですね」


やっと時間が取れたんだと、社長は俺を部屋に呼びつけた。


智「あ…、やっぱりお疲れの様ですね」

社「そうか?」

智「疲れた顔、してますよ?」


ははっと社長は笑う。


社「私の心配なんてしてくれてるのか?」

智「当たり前でしょう?」

社「はは、大丈夫だ。成瀬が、こうやって顔を見せてくれるからな…」


お前もこっちに来て座れと、社長は自分の隣をポンポンと叩く。


智「失礼します…」


俺は社長の隣に座り込む。
その重みで、ソファーがギシッと軋んだ。


社「この音、いやらしいと思わないか?」

智「え…?」

社「人の重みでしなるんだ。ベッドと同じ様に軋むんだよ…」


そう言いながら社長は俺の方に身を乗り出して来る。


智「ど、どうされたんですか…」

社「何がだ」

智「ち、近いですよ…?」


俺に覆い被さりそうな程に近付く社長から目を逸らす。
距離を取ろうと離した体は、ソファーの肘掛けに阻まれた。


社「男が近付いても緊張すると言っていただろう…?」

智「そりゃ…、こんな近距離、なかなか味わう事がありませんから」

社「今も、緊張しているのか…?」


俺の背けた顔を掴む。
頬を撫でて、社長の方へと向かせる。


智「してますよ…」


俺は、少し怯えた様な、不安そうな表情を作る。


社「はは…、やっぱりお前は、可愛いな…」


体を硬直させて、されるがままになっている俺を見る。

その俺の顎を掴むと、少し上を向かせ、社長は俺の顔をいろんな角度からジロジロと見てくる。



そんな事をされても全く動かない従順な俺を、社長は嬉しそうに見続けた。







ストーリーメニュー

TOPTOPへ