テキストサイズ

不透明な男

第13章 胸裏




ピンポンピンポンピンポーン


B「うっせえな、誰だよっ」

智「泊めて」

B「お…」


あの後空気が気まずくなった。
あんなに居心地の悪い空間はなかなか味わえない。

なんか変な空気にしちゃってごめんね、と俺は翔を残して部屋を出たんだ。

ここに来たのはなんだかモヤモヤしてたから。

それと、翔が家に来そうで怖かったから。

だから俺は、すぐにタクシーを捕まえると、運転手に無理を言って猛スピードでここに連れてきて貰ったんだ。


B「どうした、何かあったか?」

智「別に…」

B「別にって顔じゃ無いぞ?」


俺は嬉しかったんだ。
翔に恨まれてないと分かって、嫌われてないと知って嬉しかった。

だけど、好きだなんて言うもんだから動揺したんだ。

だって俺は、翔の人格を変えてしまうかもしれない。

そう思うと怖くなったんだ。


智「ね、おれと居るとどんな気持ち?」

B「へ?」

智「腹立つ?」


はい?とBは首を傾げた。


B「んな訳ねえだろ。可愛くて喰っちゃいたいな~とは思うけど」

智「ん。お前に聞いたのが悪かった」

B「…今バカにしただろ」


なんか怒ったみたいだけど今はそんなのどうでもいい。
いやまてよ、怒ったな。
やっぱ俺は、人を怒らせるのか?


智「今、怒ったよね?」

B「いんや?」

智「え、怒ったじゃん」

B「ふりだよ、ふり」


翔のは…、ふりじゃないよな。
まるで人格が変わってしまった様だった。
もう、会わない方がいいんだろうな。

会うと、翔を狂わせてしまうかもしれない。

翔は医者だし、将来のある人間だ。

俺なんかが翔の人生を狂わせる訳にいかないんだ。


B「お前…、またなんか変な事考えてるだろ」

智「や、別にそんなの考えてないよ」

B「…もう遅いし、取り敢えず風呂入れ」

智「ん」


コイツは翔と違う。

俺を見ても人格を変えない。

そうか、俺を好きという訳じゃ無いからだ。


だったらコイツは大丈夫だな。
だけど、翔には会っちゃ駄目なんだ。


なんだろ。

なんか胸がきゅっとする。



変なの…





ストーリーメニュー

TOPTOPへ