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不透明な男

第12章 惑乱




ピンポーン


いつもの迎えの奴らだ。
どうしよう。
会うなって言われたけど、聞かなきゃ何もわかんないし。


智『はい…』

『行きましょう』

智『や、でも』


デカイ男に見下ろされ足がすくむ。


『何か用でも?』

智『や、あの、親が。帰ってくるかもしれないから、待ってないと…』

『…帰って来ていないのか?』

智『うん…』


デカイ男は俺の返事を聞くとニヤッと笑って俺の背を押す。


『だったら尚更だ。さあ、行こう』

智『え、ちょ…』

『あの社長に聞いたらどうだ。案外知ってるかも知れないぞ…?』


ニヤリと笑う男に押され、車に押し込まれる。

確かに俺も聞こうと思っていた。
だけど少し怖くて、聞きたいのに足がすくんで行動に移せなかった。

だけど今日は聞けそうだ。

無理矢理とはいえ、もう車に乗ってしまった。
この車内にいるニヤニヤと笑う男達は気持ち悪いけど、もう行くしかないんだと、俺は覚悟を決めたんだ。


社『やあ智くん。久し振りだね』

智『おじさん…』


社長はニコニコと笑って俺の手を捕った。
ちょっと見せたい物があるんだと、屋敷の中を連れ回された。


社『どうだ、気に入ってくれたかね』

智『確かに凄いけど、あの、でも今日は』

社『ああ、もうこんな時間か。悪いね、少し社まで付き合ってくれるかね』

智『あ、でもあの、僕今日は、聞きたい事があっただけで』

社『…聞きたい事?』


少し不穏な空気が過った。


社『…後で、連れて行きたい所もあるんだ。話はその時に聞くとしよう』


聞きたい事を聞いたらすぐに帰るつもりでいた俺の話を遮り、勝手に事は進んでいく。
俺は再びデカイ男に車に押し込められると、車は社長の会社へと向かった。


社『少し時間がかかりそうだ。車で待ってるのも辛いだろう、応接室へ案内してやれ』


俺は車を降りると、連行されるように応接室へ向かう。
デカイ男に囲まれ、逃げる気なんて更々失せてしまうのに、俺を逃がさないとでもいう様に、強引に連れていかれた。


その、応接室へ向かう通路であの青年を見た。



あ、やば

もう来ちゃ駄目だよって言われてるのに



約束を破って来てしまった事が後ろめたくて、俺は見つからない様に顔を背けながら部屋に入っていった。



だけど、バレてたんだ





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