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不透明な男

第12章 惑乱


明るい髪から雫を滴らせる。

髪の黒さは落ちてすっかり綺麗になったが、俺は未だ黒い。

真っ黒だ。
酷く汚れていて、どれだけ洗おうと白くなる事なんて無いのかもしれない。

その汚さを、俺はこれから晒すんだ。





智「…まだ、息あがってるの?」

A「ん、ああ。ちょっとな」


ソファーでくつろぐAは、心なしか少しぐったりとしていた。


智「なんか、スッキリしてない?」

B「そうか?」


キッチンに籠るBは、それに比べで身軽でイキイキとしている様に見えた。


智「ま、いいけど…」


そんな事よりメシだメシと、席に着くよう促される。


B「さあ食え!」

A「相変わらず旨そうだな」

智「ふふ、いただきます」


どのタイミングで話を切り出そうか。
風呂上がり一番に話そうと思ったのに、ヘンな空気を出しやがるから切り出せなかった。


B「どうだ?少しは元気になったか?」


テーブルに肘を付き、身を乗り出して聞いてくる。
その顔は、眉を少し下げてはいるが、笑顔を保とうと笑っている。


智「お前は元気そうだね」


俺に気を使ってニコニコとしているのが分かる。
だから、気を使わせないようにと俺は答える。


智「急に肌艶が良くなったよね。おれが風呂に入ってる間にマッサージでもしたの?」

B「えっ」

智「あ、でも自分じゃ無理か。人にやってもらわないとそこまでツヤツヤしないもんね?」

A「ぶほっ」


チラッとAを見ると途端に吹いた。


智「何を今更…、二人はそういう事してんだって前に言ってたじゃん」

B「まあ、な。やっぱ溜まるモンは出しとかないと身体に悪いから」

智「やっぱ我慢してたんじゃん(笑)」


お、やっと笑ったなと二人も笑った。


智「なんだよ、おれが笑うとおかしいの?」

A「違う、安心したんだよ。お前最近笑わないから」



そうだっけ?

笑ってたと思うんだけどな



智「おれの事、心配してくれてるの?」

B「当たり前だ」


俺の両隣から二人は笑顔を向ける。


智「…そんなの、しなくていいのに」

A「そういう訳にいかないだろう」


俺が強がってると思ったのか、優しいトーンで話してくる。


智「心配なんて、される立場じゃないんだ」




どういう事だと聞いてくる二人に俺は答えなきゃならない。







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