
不透明な男
第12章 惑乱
Aと共にベッドに倒れ込み、息をあげる俺をBは見ている。
俺は薄目でそれを確認すると、力の抜けた身体を投げ出したままBに問う。
智「っ、お前、どっち…」
B「は?」
こんな状況でお預けをくらっている。
男なら我慢するのは辛いだろう。
智「我慢出来ないでしょ?どっちだよ…」
B「あ、ああ…。ま、お前が相手なら俺は攻めたいけど」
A「正真正銘のゲイなのにそんな事出来るのか?女にだって挿れた事無いだろう?」
B「成瀬なら話は別だ。男の本能ってモンを沸き上がらせる天才だからな」
智「へ?」
A「とにかくお前はそそるんだよ。って事だ」
B「でも今日は我慢してやるよ。ほら、風呂に入ってこい」
智「え…、辛くないの?」
B「…俺の好意を無駄にする気か?」
そんな顔で見るなら襲っちゃうぞと、ふざけた顔をした。
B「腹減ってるんだろ?作っといてやるからサッパリしてこい」
バスタオルをポンと俺に投げる。
受け取った俺は、Bには悪いが少しほっとして風呂に向かった。
黒く流れる水を見て思う。
ちゃんと話さなきゃなと。
アイツらはあの青年の事を探してるんだ。
何があったか知りたいんだ。
初めて出会った時からアイツらは優しかった。
少しおかしな所もあるけど、アイツらなりに俺を守ってくれていた。
それはきっと、あの青年が俺を守ろうとしてくれていたからだろう。
あの子によく似た俺を、ヘンな使命感で守らなきゃと思ったんだろう。
俺は心の何処かでその事に気付いていたんだ。
だけど、気付かないふりをしていた。
気付いてしまったら話さなきゃならないから。
あの青年の結末を。
俺の、汚さを。
