
不透明な男
第12章 惑乱
泣いてるのか?とAが俺の顔を覗き込もうとする。
俺の背に居るAには俺の顔は見えていなかったらしい。
智「泣いてない」
B「泣いてるだろ」
智「泣いてないって…」
Bは、Aに凭れる俺の身体を引き寄せ抱き締める。
B「なんでそんな悲しそうな顔してるんだ」
智「悲しそう…?狡い顔の間違いでしょ」
俺は身体を少し離し、Bに俺の顔を見せた。
智「ほら、卑怯な顔、してるでしょ」
B「そんなのしてねえよ…。綺麗な瞳をしてる」
智「ふふっ、どこ見てんだよ」
俺はクスッと鼻で笑うと、真顔に戻りBを見つめた。
智「…濁ってるでしょ?」
ほら、と首を傾げBを覗き込んだ。
B「どこがだよ。透き通ってる…」
智「ん……」
俺の顔を見て、何かいたたまれなくなったのか、俺の頬を両手で挟むと唇を押し付けてきた。
智「ん、ん…っ、んっ」
キスをしながら俺は喘ぐ。
唇を塞がれて、籠った喘ぎをBの口内に聞かせた。
智「ん、ぁ…っ、ん、んぅっ」
動きを止めていたAが、腰を押し付け俺の中をかき混ぜる。
さっきまでの規則正しい揺れと違う刺激に、思わず俺は震えた。
智「あっ、は、はぁっ」
A「やっぱり刺激が足りなかったんだな。そんな事、考えられない位に気持ち良くしてやるよ…」
俺の前に居るBは、なんらかの合図をAから受け取ったらしい。
僅かに頷くと、俺の胸に舌を這わせてきた。
智「ん、はぁ…っ」
俺がおかしな事を考えないように、快楽に集中出来るようにと、二人で俺をしつこい程に愛撫する。
大きな手で身体中を撫でられ、腕や足を唇が這う。
智「だ、駄目だよ、やめ…」
A「忘れたいんだろう?」
智「ふ、二人は、無理だっ…て」
その二人の体温に挟まれ、俺は何処まで狡いんだと、自己嫌悪に陥る。
智「んぁっ、あ、あっ」
B「これなら、忘れられそうだろ?」
俺を激しく突き始めたと思ったら、Bが俺を口に含んだ。
智「あ、あっ、だから、それ…っ」
B「ん?」
智「んん…っ、く、だ、駄目なんだ…っ、て」
静かに吐息を吐いていた筈なのに、Bの乱入で俺は途端に喘いだ。
智「あ、はぁっ、も、もう…っ、イッ…」
いいよ、出せとBが促すと同時に俺は籠った熱を吐き出す。
そして俺は、覚悟を決めた。
