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不透明な男

第12章 惑乱


この刺激に揺られていると、もうどうでもよくなってくる。

結局俺の親はもう居なかったし、その原因を作ったのは俺だった。
あの青年だって死んだし、その原因を作ったのも俺だ。

俺さえしっかりしていれば、こんな事にはならなかった。
結局は全て俺のせいだった。

その事実に愕然とした俺は、ズキズキとする胸の痛みを抱えながら快楽を求めていた。


そんな自分は最低最悪だった。

今すぐ消えればいいのに。

罪の重さに耐え兼ねて逃げる様にふわふわと揺られる。

そんな俺の事を、今すぐ殺してやりたかった。


智「ん、んぅ…っ、く」

A「どうした…。また、おかしな事を考えてるのか?」

智「なにも、考えてない…」


俺はバカだ。
何も考えてなかったんだ。

俺が全ての諸悪の根元だったなんて、考えもしなかった。


智「はぁ、はぁっ…、め、…ん」

A「なんだ…?」

智「ご、めん…ね…」


どうして謝るんだと聞くAに、俺は何も答えられなかった。

真実を話して詫びなければならないのに、この後に及んで未だ、俺の口は開かなかった。




バサッ


A「あ」


目を閉じて息を荒げる俺は、薄く目を開け音のする方を見る。


智「はっ、はぁっ」


かろうじて目は開けたが後頭部はAの肩に預けたままで、唇は薄く開き浅い呼吸は止められなかった。


A「…っ、今、良いとこなんだ」

智「んっ、んぅ」


眉をしかめ、瞳だけを動かし立ち竦むソイツを見た。


B「……い、いやいやいや。何をやってんだよ」

A「…見たら分かるだろ」


立ち竦むBはAに凭れて脱力する俺を見る。
そんなBを無視してAは俺を揺さぶる。


智「はっ、はぁっ、は、恥ずかしい…よ、見んな…」

A「成瀬が嫌がってる。席を外せ」

B「お、おいおい。そんなのアリかよ…」


ふわっと俺の頬に手が触れた。
目を丸くしたBが静かに近寄ってきたんだ。


B「…なんで泣いてる?」





おれ、泣いてたか?



ツツッと、俺の涙を追う様にBの指が俺の頬を滑った。



なんだよコレ…

自分が悪いのになんで涙なんて出んだよ



おれは、完全な卑怯者だな





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