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不透明な男

第12章 惑乱


ベッドの淵に腰掛けるAを背凭れにするように、俺はAの上に居た。

Aの膝で俺の両足を割り開き、俺の首に唇を這わせながら俺を揺さぶる。

そんな俺は、Aの肩に頭を凭げて浅い息を吐いていた。


智「はっ、はぁっ、は…っ、ん…」

A「お前、今日は一段と可愛いな…」


抵抗なんて何もしてなかった。
それどころか俺は甘える様に腕をAの頭に回し、キスをせがんだ。


智「ん、んぅ…」

A「今日は、芝居じゃ無いよな…?」


返事もせずにキスをする。
首を捻って唇に吸い付く俺の頭を、Aは優しい手つきで掴み引き寄せる。


智「ん、んっ、…っは」


唇が離れてもなお、俺の身体を撫でながら優しく揺さぶる。
そのゆっくりとした振動が、俺の思考を奪っていく。


A「はぁ、は…っ、気持ちいいか?もっと、激しい方がいいか?」

智「んん…っ、これで、いい…」


荒く小さな息を吐きながら俺は言う。


智「気持ちいいよ…」


その静かな快楽が凄く心地よくて、閉じた目を開ける事が嫌になる位だった。
この、ふわふわと気持ちのいい時間の中に、ずっと居たい。うっかりそう思ってしまう程だった。


智「ああ、駄目だなおれ…、こんな事…」


思わずヘンな考えをしてしまった事に気付いて我に返る。


A「何も駄目な事なんて無いだろ…」

智「駄目だよ…」


そんな事を言いながら、頭では分かっていながら、俺はされるがままに快感を与えられる。


智「はぁ、はっ、あ、あぁ…っ」


少し強く揺さぶってきた。
俺が甘い雰囲気を壊しそうになったからだろうか。
そんな事考えるなと言わんばかりに刺激を強めてきた。


A「忘れたいだけなんだろう?だったら、何も考えるな」

智「はっ、はぁっ、あ…」

A「言っただろう。俺が忘れさせてやるって…」

智「ん…」



どっちにしろ今はもう無理だ。

分かってても抵抗なんて出来ない。

というか、この時間が俺を救ってくれている。

そんな気さえした。




どういう訳か俺は、こんな行為で癒されているんだ。





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