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不透明な男

第11章 背徳


智「っ、く…、はっ、」

A「ほら、我慢しないで吐き出せよ」


ニヤニヤとそれはそれは愉しそうに俺を見下ろす。


智「はぁ、はっ、う、うるせ…え…」

A「そんな紅い顔して…、身体も熱いんだろう?」


コイツは一体何を吐かせたいんだ。
目的見失ってないか?


A「正直に言えよ。話したら、すぐにイカせてやるぞ?」

智「んん…っ、そ、そんなモン、いらねえよ…」

A「こんなにビクついてるのに…。頑固だな…」


もう俺は意地が止まらなかった。
このドSに負けるのは悔しかったんだ。


智「そっちこそ、もう限界なんじゃねえの…」

A「あ?」

智「涼しい顔してるけど、汗、びっしょりだよ…」


ふふっと俺も鼻で笑ってやった。


智「んぁ、あっ」


ぎゅっと俺は眉をしかめた。
急に突き上げてきやがる。


A「とうとう声、出しちまったな。折角我慢してたのに残念だったな」

智「んんっ、く…」


汗が吹き出る。
身体が凄く熱くなってる。
こんな状況で、俺は罪悪感のカケラも無かった。


A「早くイキたいんだろ?」

智「それは、お前だろ…っ、中、パンパンだよ…?」

A「口の減らねえヤツだな…」


組み敷かれた俺は、身体を熱く火照らせキラキラと汗を光らせる。
ぐったりと力の抜けた身体から瞳だけを動かしAをチラッと見てやる。

そんな、まるで降伏したかの様な姿でわざと悪態をつく。

これは俺の、煽り、だ。

わざと煽ってやった。


智「足んねえんだよ…。そんなんで、俺を吐かせられる訳無いだろ…」

A「はは…、そうかよ。本気で泣かせてやる…」


俺の悪態を聞いたAの目はキラッと光った。
怒った顔じゃない。
さっきよりも、もっと愉しそうな、わくわくした感じが見てとれた。


智「俺は泣かないよ。泣くのは、お、ま、え♪」


コイツに対して、罪悪感なんて全く感じない。


俺が感じるのは、大事な人の心配そうな顔を思い浮かべた時。

俺はなんで息をしているんだろうと思った時。


だけど今はそれを封印するんだ。


A「妙に愉しそうだな成瀬、いや、智…」

智「ふふ…」




背徳

それは、道徳に反すること


今の俺の現状を見た人は

俺の事を、そう呼ぶんだろうか





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