
不透明な男
第11章 背徳
しばらくすると、部屋には俺の浅い呼吸が響いていた。
少しずつ酔っていく松兄ぃに、しめしめと酒をガンガン注いだ。
だけど松兄ぃは、あっさりと俺の思惑を見抜いていたんだ。
智「はぁっ、はっ、ま、松兄ぃ」
兄「俺を騙すなんて100年早い」
智「んんっ、ご、ごめん…って」
しかもそれだけじゃなく、俺が熱を欲している事さえも簡単に見抜いていた。
智「な、んで、わかるんだよ…っ」
兄「誤魔化せると思ってたのか?」
智「も…、これ以上、狡いヤツにしないでよ…」
松兄ぃの熱にうなされながら、俺は心を吐き出す。
兄「お前が狡いんじゃない。お前の弱味につけ込んだ俺が狡いだけだ…」
智「ちが、う…、おれが、ずる…っ」
兄「お前は何も悪くない。悪いのは全部俺なんだ」
だからなんでそんな事言うんだ。
智「駄目なんだよ…、そんな、優しくされちゃ、おれは…」
生きている事に罪悪感を感じる。
智「頼むよ…、優しくしないで…」
兄「智…」
涙の溢れた目で松兄ぃを見る。
兄「泣くな…」
智「お願いだよ松兄ぃ…、おれを」
松兄ぃの優しい熱に、つい思っていた事を口走ってしまった。
智「殺して」
一瞬空気が止まった。
ぎょっとして俺を見た松兄ぃが、目を見開き固まったんだ。
兄「智、お前何を…」
智「ふふ…、嘘だよ…」
俺はニコッと笑うと、固まったままの松兄ぃに両手を広げて腕を伸ばした。
すると、我に返った松兄ぃがぎゅっと抱き締めてくれる。
智「松兄ぃ」
キスして?と目で訴えた。
すると松兄ぃは、俺に吸い込まれる様にキスを注いでくれる。
智「もっと…、深く…」
兄「ん…」
熱くて深いキスを貰う。
呼吸が苦しくなって、ほんの少し息継ぎをやめるだけで、このまま死ねるんじゃないかとさえ思う。
兄「何がお前を苦しめてる…?」
智「別に、苦しくなんてないよ」
兄「だけどお前…」
智「しゃべんないで、もっと、キスしてよ…」
俺は深く口づける。
唇の隙間なんて出来ない位に深く。
松兄ぃの舌を誘導して俺の口内をいっぱいにする。
智「ん、ぅ…」
ねえ、このまま殺して?
その熱いキスで、おれの息の根を止めてよ
