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不透明な男

第8章 序章


兄「泣くな…」

智「ふふ、まだ泣いてないよ…」


松兄ぃの方が泣きそうなのに、俺の心配をするんだ。


兄「俺の為に胸を痛める様な事しなくていいんだ…」

智「松兄ぃ…」

兄「お前の為なら、損くらいいくらだってしてやる」


そんなの大歓迎だ、だからお前は気にするなと、優しい顔で俺に言い聞かせてくる。


智「ふふ…、そんな事言われたら、損させたくなるじゃん」

兄「ああ、どんな事でも受け止めてやる」


とてつもなく優しく、愛しそうに見つめてくるその瞳に俺は、すがりたくなってしまうんだ。


智「前に、松兄ぃが言ったでしょ? おれ、狡いんだよ…?」

兄「そんなの百も承知だ」



ほんとに損する性格だな…

見た目はヤクザ並みに怖いのに…



智「松兄ぃ、今日だけ…、もう一度だけ、甘えさせてよ…」



俺は、ついその優しさに甘えたくなるんだ。

だって、なんでも受け止めてくれる。

俺を、暖かく包んでくれるって知ってるから。



俺が冷えてしまわないように、その熱で暖めて欲しいんだ。



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