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不透明な男

第8章 序章


智「ずっと甘えてる訳にもいかないしさ…」

兄「そうか…」


チラッと松兄ぃを覗き見た。
松兄ぃは、寂しそうな顔をして、深く考え込む様に一点を見つめている。


智「そろそろ仕事も探さなきゃだし」

兄「そうだな…」


今までありがとね?とニコッと笑うと、松兄ぃは優しく笑みを帰してくれる。


兄「俺がやりたくてやった事だ。そんなの気にするな」

智「ほんと、ありがと…」


松兄ぃは優しすぎるんだ。

そんな寂しそうな顔を見せているのに、俺を引き止めない。
だから俺は甘えてしまう。
だから、胸がチクッとするんだ。


智「ささ、最後の晩餐なんだから。グイッといっちゃってよ」

兄「お前…、誰が払うと思ってんだ(笑)」

智「ふふ…」


明日、家を出ると松兄ぃに伝える。
普段は節操を保って呑む松兄ぃが、今夜は酒を煽る様に呑んだ。


兄「さとしぃ~」

智「なぁんらよ、まちゅに~」


お前も呑めとガンガングラスに酒を注ぐもんだから、結局俺も随分酔ってしまった。


兄「さぁ~と~しぃ~…」

智「はいはい、かえりましょおねぇ~」

兄「うぃ~っく」


こんなに泥酔する松兄ぃを初めて見た。
俺は、覚束ない足取りで大きな松兄ぃを抱えタクシーに乗り込んだ。





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